今月の話
そめや歯科医院 院長 染谷 道雄
あなたのお口に、歯は何本ありますか?
すぐに正解を答えられる方が、何人いらっしゃるでしょう?
講演をするとき、私はよくこの質問をしますが、正解者はほとんどありません。
歯の講演を聞きにきている、歯に関心のある方でさえ、自分の歯がいったい何本あるのかを知らないのです。一生懸命に働いてくれている「歯の気持ち」を考えると気の毒になってしまいます。

目がいくつあるのか? 手や足の指が何本あるのか? 知らない人はまずいないでしょう。 歯はたくさんあるので、つい軽く見られてしまうのです。
「1本くらい悪くても…」とか「1、2本なくてもなんとか食べられる」と思われがちなのです。これは大きな間違い。こうしていつの間にか歯が1本もないという状態になってしまうのです。

歯の数が教えてくれる正しい食事
歯の本数がわかったところで、この数が教えてくれる正しい食生活の話をしましょう。
昔から、食生活の基本は「歯の数に合わせて食品をとる」ことだと言われているのをご存じですか?
人間の歯は32本。これを上下左右の4等分にして1区画が8本。 その内訳は…
野菜や果物をかじる前歯が2本
肉をかみ切る犬歯は1本
米や麦をすりつぶす臼歯が5本。

そう、歯の本数は、野菜・果物:肉類:穀類は2:1:5で食べるのが理想だと教えてくれているのですね。

転落への道を歩まないために…
一度治療した歯が、痛み出したことはありませんか?原因は、ほとんどが虫歯の再発だと思います。
同じ歯の別の箇所に虫歯ができたり、修復物と残った歯の境界から虫歯ができたり。 また、そのようなことがないように努力しているのですが、治療した際の接着剤が溶けて、汚れのたまりやすいすき間ができてしまうこともあり得るのです。
これらの責任が、患者さんにあるとも歯科医にあるとも言い切れないのですが、はっきり言えることは虫歯には「治療したから、これで万全」は通用しないということです。

歯の病気に「完治」はありません。虫歯になったら、もう「手遅れ」なのです。歯科医にできることは、「手遅れ」になった歯の後遺症を最小限に食い止めることだけ。 削る・詰める・抜く・かぶせる・歯茎の治療・ブラッシング指導・入れ歯を入れる。すべてが、後遺症を最小限に食い止めるための手段です。
削ったり、詰めたりした歯は、もともとの歯よりもずっと弱くなってしまいます。治療前と同じ清掃状態だったら、またどこかに虫歯ができる…明白なことだとお思いになりませんか?

歯は治らない。 このことを正しく理解して、予防につとめない限り、転落の道を歩いてしまうことになるのです。